ERPのデモで何を確認するか|業務シナリオと質問の作り方

ERPのデモは、画面の印象を比べる場ではなく、自社の重要な業務がどう成立するかを確認する場です。ベンダーごとに異なる得意な場面だけを見ると、製品の差を判断しにくくなります。本記事では、共通シナリオの作り方と、実演で確かめるポイントを説明します。

この記事の要点

  • 共通の業務シナリオを使い、通常処理と重要な例外を確認する
  • 標準機能・設定・追加開発・模擬画面を区別して記録する
  • デモで未確認の条件を、検証や契約前の確認へ引き継ぐ

Agenda(この記事の内容)

  1. デモの目的と限界を理解する
  2. 共通シナリオを作る
  3. 操作と情報のつながりを見る
  4. 制約と例外処理を質問する
  5. 結果を記録し、次の確認へつなぐ
  6. 実演中に確認できない項目の扱い
  7. よくある質問

デモの目的と限界を理解する

デモで確認できるのは、用意された環境とデータでの動作です。本番の処理量、すべての権限、連携、移行データの品質まで証明されるわけではありません。実演で見る項目と、資料・検証で確認する項目を分けます。

特に、標準機能を実演しているのか、事前に作った追加機能なのか、将来の実装イメージなのかを明確にします。同じ見た目でも、費用と導入リスクは違います。録画や画面画像だけで動作確認済みと扱わないことが大切です。

目的は「使えそう」という感想を得ることではなく、要件の実現方法、操作の負担、制約、不明点を残すことです。評価表と要件番号を対応させ、結果を後から追えるようにします。

共通シナリオを作る

シナリオには、開始条件、担当者、入力、処理、期待する結果を記載します。例えば受注登録から出荷、請求、入金確認まで、部門をまたぐ流れを選びます。主要な取引を少数に絞り、同じ条件で各候補を確認します。

架空の卸売会社なら、通常の受注に加えて、一部欠品、分割出荷、返品、請求後の訂正を含められます。すべての例外を一度に入れるのではなく、頻度と影響が大きい場面を優先します。細かい画面指定より、業務上の結果を指定します。

データは説明用の架空データを使い、必要な件数や属性を揃えます。実データを使う場合は、自社の取り扱いルールと利用許可を確認します。製品比較のために不要な個人情報や機密を渡す必要はありません。

確認場面質問例
通常処理前後の業務へ何が引き継がれるか
訂正・取消履歴と残高にどう反映されるか
承認・権限担当者ごとに何を実行できるか
障害・例外失敗をどう検知し復旧するか
実現方式標準か追加対応か、費用に含むか

操作と情報のつながりを見る

画面の入力項目だけでなく、前工程の情報をどれだけ引き継げるか、後工程で何を確認できるかを見ます。受注の変更が出荷と請求へどう影響するかなど、状態の変化を追います。

業務担当者には、自分の作業だけでなく、必要な情報へたどり着けるかを確認してもらいます。承認者には、何を根拠に承認できるか、差戻しや代理承認の扱いを見てもらいます。管理者には権限設定や履歴の確認方法を質問します。

「何回クリックしたか」だけで使いやすさを評価しないことも重要です。確認すべき情報が一画面に揃うか、誤入力を防げるか、例外から復旧できるかを含めます。日常の反復作業と、頻度が低い重要処理は評価の重みを変えて構いません。

制約と例外処理を質問する

質問は「できますか」で終わらせず、「どの条件で」「誰の権限で」「どの方法で」「失敗したらどうするか」まで確認します。訂正操作では、取消、再登録、会計への反映、履歴がどうなるかを追います。

連携を含む場面では、接続先が実際に動いているか、模擬応答かを確認します。連携が止まった場合にどこで検知し、何を再実行するかも聞きます。デモで成立しても、監視と復旧の設計は別に必要です。

処理量や応答速度は、デモ環境の印象から断定しません。重要なら、想定件数、同時利用、時間帯、測定方法を揃えて検証を計画します。未確認の状態を評価表に残すことで、説明と実証を区別できます。

結果を記録し、次の確認へつなぐ

確認結果は、要件番号、実演内容、実現方法、制約、証拠、追加質問で記録します。参加者の感想は別欄に置くと、主観と事実を混ぜずに扱えます。評価を終えた直後に不明点を整理しましょう。

実演できなかった項目は、理由と確認予定を残します。資料回答で十分か、追加デモや小規模検証が必要かを判断します。重要な必須条件が未確認のままなら、採用判断への影響を明示します。

最終的には、要件の適合性と、業務変更が必要な箇所をまとめます。標準機能へ合わせられる範囲が見えると、追加開発の判断にも役立ちます。デモの結果は選定資料だけでなく、導入時のFit&Gapや受入テストのシナリオへ引き継ぎます。

実演中に確認できない項目の扱い

大量の受注を一括処理する要件があるのに、デモでは数件だけを処理した例を考えます。少件数で正常に動くことは確認できますが、想定する件数や時間内に処理できることまでは確認できません。「デモ済み」という一つの印だけで要件を完了させないことが重要です。

記録を、機能の流れは確認済み、想定件数での性能は未確認、と分けます。次に測定条件、検証環境、必要なデータ、実施者、時期を決めます。標準資料の性能説明を使う場合にも、自社と条件がどの程度異なるかを確認します。

参加者への質問も役割ごとに分けます。現場には作業の成立性、承認者には判断材料、管理者には権限と履歴を確認してもらいます。最後に全員の感想を一度に聞くより、事前に観点を渡しておくと、重要な確認が抜けにくくなります。確認できなかったことを明示できるデモほど、次の判断に役立ちます。

デモの議事録は、ベンダー側にも事実関係を確認してもらいます。意見を一致させるためではなく、何を実演し、何が未確認で、どの条件を説明されたかを揃えるためです。回答待ちの質問は担当者と期限を付け、次の評価会までに必要な情報を集めます。

確認時点も記録します。

よくある質問

最初から自社専用のデモを依頼すべきですか?

初期調査では標準デモで基本を理解し、候補が絞れた段階で共通シナリオを使う進め方が考えられます。目的と準備負担を合わせて判断します。

デモで動けば標準機能と考えてよいですか?

いいえ。設定、追加機能、個別開発、模擬処理のどれかを確認します。提供条件や見積もりへの包含も記録します。

次に確認すること

自社で重要な取引を一つ選び、開始条件・担当者・期待結果・例外を一枚にまとめてください。

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参考情報の確認日:2026年10月28日。運営方針・プロフィール

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